幼い頃、学校が休みになると祖父母のいる田舎によく預けられていました。
自然に囲まれた美しい場所で、山の上に家がありました。
3分ほど歩くと川もあり、夏休みには1日何時間も泳いだり、魚を取ったりして従兄弟たちと野生児のように遊びまわりました。
祖父母の家が農家だった事もあり、畑には野菜、田んぼにはお米、裏山には栗の木、たけのこ、柿、山菜、しいたけ、川では魚
が取れるといった風に、自給自足に近い生活が送れる様なところで、まるでハイジか、トムソーヤになった様な気分になれる、子供にとっては最高の場所でした。
もちろん、それらの収穫物は祖父母が昔植えて、大切に育てた物です。
大好きな場所だったのですが、1つだけどうしても苦手な事もありました。
それは夜
になるとあたり驚がくほど真っ暗になる事!!
外灯も家の入り口に立ってる以外は、下の道に下りるまでなく、お隣さんは川の向こう(1、2キロ先)なので、人も歩いていません。まさに「漆黒の闇に包まれる」ってこの事!!といった感じでした

夜、外にあったトイレに行くのがどんなに怖かったか
いつも祖母についてきてもらっていたのを覚えています(笑)。
大人になった今でもきっと一人ではトイレに行けないでしょう
田舎ならではの不便なところもあり、水
は井戸から引いており貯水タンク
にためて使っていたので、夜になるとタンクの水の量が減り、蛇口から出る勢いが悪くなったりしたので、皆で大事に大事に使いました。
お風呂も、薪をくべて焚くいわゆる「五右衛門風呂」という物で、毎日1時間以上かけてお風呂を焚いていました。
この五右衛門風呂は底が熱くなっているので火傷しない様に、入る時に板を踏んで底に沈めて入ります。上手に踏まないと潜水艦が飛び出してくるように板がお風呂の底からバッシャ~ン!!!
っと飛び出てきたりします。
よく従兄弟とふざけてわざと板を飛び出させては、大笑いしていました。
毎回1、2週間の滞在でしたが、何十年経った今でも鮮明にあの頃の事を思い出します。私が中学に上がる頃には、祖父母は叔父家族と住むようになり、あの思い出の家には誰も住まなくなりました。
それでも私たち家族には思い出の家なので、年に1回はたけのこや山菜を取りに出かけています。
で、去年の春、帰省した時に家族で久しぶりに行ってきたのですが、家に上がる坂道の途中に立派な桜の木がありました。
母が、「じいちゃんが植えた桜よ」と言いました。知らなかった。聞いていたけど覚えていなかったのかな・・・?その桜は、鮮やかな桃色で、たくさんの花をつけてたくましくそこにそびえ立っていました。
祖父は数年前になくなりました。厳しい自然の中の暮らしを手放し、長年暮らした土地を離れましたが、最後まであの家の事を気にしていました。とにかく優しい人だったのですが、気性の激しいまっすぐな所のある人でした。私はそんな祖父が大好きで、よく膝の上に座って遊んでもらっていました。
じいちゃんの桜は私がよく見る桜より、濃い桃色をしていました。まるで、優しくて、気性の激しい祖父に似たかの様な色だと思いました。

長い年月が過ぎ、幼かった子供達は大人になり、生まれた土地を離れ、あの家もすっかり古くなってきました。色んな事が変わってきたけれど、じいちゃんの桜だけは、祖父の愛した土地に今でも根付いて綺麗な花を咲かせていました。
大事なものを想う気持ちはずっと変わらないような気がして、凛と咲く桜の花がなんだか誇らしく思えました。
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